三谷幸喜監督の映画最新作「スオミの話をしよう」を、9月19日と27日の2回観に行った。
ともにユナイテッドシネマ稲沢。
今回はたまたま目に入ったTVのCМスポット以外、事前情報を入れずに劇場に臨んだ。
初回観覧の印象としては、「ミステリーコメディ」を標榜する割にはさほど考えずに面白いっていう軽さと、あとは言わずもがなながら「鎌倉殿の13人」の余韻。少ないメインキャストに「鎌倉殿」の主要登場人物が8人いる(ドラマのナレーションの長澤まさみと、映画では声の出演だけの山寺宏一含む)。
で、2回目を観た後の印象は、「こんな舞台演劇感強かったっけ?」という驚き。
三谷映画は元々、これは映画ってゆーより戯曲の範疇だよね、って感じる作品がたびたびあって、今回は特に、掛け合いから動きまでお芝居チックな場面がそこかしこに感じられた。つーか「清須会議」以降は毎回感じてる気がする。もちろんそれが三谷映画の個性でもあるし、監督自身も「舞台と映像の融合が理想」とパンフレット(写真)のインタビューで言明している。
そこでひとつ頭に浮かぶのが、映像とナマ舞台の「時間経過感覚」問題。
これは以前別の三谷映画を観た時にも感じたことだけど、ナマ舞台の最大の特徴は、かなり突飛な登場人物や出来事も時間経過とともにドガチャガで流れてっちゃう点。そのあとの強烈インパクトのクライマックスがあればオールOKに感じられるのが、ナマ舞台の良さ。
対して、映像に於いては、それがドガチャガのうちに流れていかない。今回の「スオミ~」に於いては、長澤演じるスオミが歴代の5人の夫と今なお付き合いを継続していて、それぞれの男と対応する際にスオミが性格を使い分ける、という基本シチュエーションがそれにあたる。この設定、舞台で見たら破天荒で最高に面白そう。詰問されるシーンなんて、拍手すら起きそうなんだけどね。私が観た映画館ではひと笑いも起きなかった。
笑いが起きなかったといえば、セスナから落ちた小磯が上昇気流で上がってくるシーンなんて、場内大爆笑になっていいと思うんだけど、私の上映回では2回ともサッパリだった。なんでかな。客層が悪いのかな。閑話休題。
考えてみると、本筋である寒川邸の場面って、時間にすると昼~夜のたった半日なんだよね。合間合間に元夫たちの回想が挟まるので経年表現が複雑だったけど。リアルドラマでは考えられない時間運びながら、そこを力技で持っていけるのがナマ舞台とナマ観客との共同幻想世界で、そうは見させてくれないのが映画のスクリーンと客席。んー、あくまで個人の感想だとは思うけど…そう感じません?
提案。三谷監督はいっぺん、過去作の舞台演劇版を映画に撮って(シネマ歌舞伎みたいに)、それを全国上映してみたらどうだろうか。ナマ中継でやってパブリックビューイングにしたらもっといい。最後は今書きながら気づいた私の思いつきなので気にしなくていーです。